【 この本を選んだ理由 】
「古いロシアの本」と言えば、欠かすことができないのがロシアの絵本。でもロシアの絵本ですから、書いてある言葉は、当然ロシア語。そこで、「読めるロシア絵本」を一冊、ということで、本書をセレクトしました。本書は、「幻のロシア絵本」展でも紹介されましたし、また当時出版されたロシア絵本の翻訳本として、珍しいものだと思います。
【 この本の調書 】
ヴィジュアル雑誌の原点とも言える『USSR IN CONSTRUCTION』。ソヴィエト連邦(今のロシア)が、国の宣伝を目的として、1930年に創刊した雑誌。ソヴィエトが崩壊した以上、その目的は果たされなかったわけですが、しかしこの雑誌のアート・ディレクションが、世界の雑誌に与えた影響はとても大きいです。
この雑誌のADを務めたのは、リシツキーやロドチェンコ等、「ロシア構成主義」として知られる、著名な芸術家たち。彼らが取り入れた「フォト・モンタージュ」の手法は、その斬新で、力強いグラフィック・デザインによって、その後の世界の写真雑誌の流れを方向付けました。アメリカの『LIFE』や『LOOK』、そして日本のグラフ雑誌の原点である『FRONT』など、『USSR』の影響を受けた雑誌は数多いです。
本誌は、約10年にわたり発刊された『USSR』のなかでも、初期に位置するもの。英語で書かれた内容は、当時の共産主義一色ですが、その斬新なグラフィック・デザインは、今なお色あせることはありません。
【 この本を選んだ理由 】
いのまたさんのご依頼を伺って、真っ先に私の頭に浮かんだのが、この『USSR IN CONSTRUCTION』。この雑誌の価値については、調書で書いた通りですが、さて問題は、どうやって手に入れるか。悩んだあげく、相談に行ったのが、当店の師匠である青山の古書 日月堂さん。ありました。私が思い描いていたものに、限りなく近い『USSR』が。しかも、相場価格の半値に近いお値段で。
そういうわけで、今回古本屋として、大変やり甲斐のあるお題を出してくださったいのまたさんと、貴重な商品を快く譲ってくださった日月堂さんに、心より感謝いたします。
【 この本の調書 】
著者の長屋美代さんは、日本初のロシア料理専門店「ロゴスキー」のオーナー。1951年、ご主人とともに、渋谷駅前に小さな屋台を出したのが始まり。びっくりしたのは、ご夫婦ともに、ロシア料理を専門的に学んだことがないということ。ですが、戦後の混乱の中、家族4人が生きていくために、夫婦で必死にロシア料理を勉強します。たった一人のコックとして、厨房を切り盛りする奥さん。そして、こちらもたった一人の接客担当である、ロシアの民族衣装ルバーシカを着た旦那さま。
本書は、開店して丸七年が経った頃に出版されたもの。前菜からデザートに至るまで、実用的なロシア料理のレシピが、さまざまなエピソードをまじえながら紹介されています。
ごくごく普通の家庭の主婦が、生きていくために飛び込んだロシア料理の道。真摯に取り組んできた思いは今も生きつづけ、今日も同じ場所でお客さんを幸せにしています。
【 この本を選んだ理由 】
ブルーのギンガムチェックのテーブルクロスと、よく煮込まれたボルシチの装幀が何ともおいしそうです。だんだんと寒くなってくるこれからの季節、身も心も温まるロシヤ料理の本はいかがでしょうか?タイトルの、「ロシア」ではなく「ロシヤ」という表記にも、味わいがあります。50年前の本なので、相応に劣化していますが、非常に入手困難な本なので、セレクトいたしました。
Шум ка дворе ( Noise in the yard )
- 著者:Ек. Леткова ( Ekaterina Letkova )
- 絵:Д.Брей ( Andrej Brej )
- 出版社:Молодая Гвардия ( Young Guards )
- 発行年:1932年3版
- テキスト:ロシア語
- タテ155o×ヨコ133o ソフトカバー
- モダン・クラシック価格:58,000円
【 この本の調書 】
2004年に開催された「幻のロシア絵本」展によって、何度目かのブームを巻き起こしたロシア絵本。ここで言うロシア絵本とは、1920年代から30年代半ばにかけて出版された、ロシア(ソヴィエト)の絵本のこと。当時のロシアは、ロシアン・アヴァンギャルドと呼ばれる、芸術活動の全盛期で、芸術のあらゆる分野でヨーロッパをリードしていました。そんななか、子供の教育のための児童絵本は、新しい国家であるソヴィエトが、特に力を入れた分野でした。
ロシア絵本の特徴は、粗末な紙に、とてもインパクトのあるイラストが描かれていること。コラージュやモンタージュなどの、ロシアの絵本画家が用いた斬新な手法は、その後のヨーロッパの絵本に多大な影響を与えました。当時国交がなかった日本においても、デザイナーの原弘、画家の柳瀬正夢、武井武雄などが、このロシア絵本に注目し、その影響はわが国にも及びました。
本書は、そんなロシア絵本のなかの一冊。出版されたのは、ロシア絵本が最も盛んだった1932年。邦題にすると、『裏庭の鳴声』となるのでしょうか、様々な、庭の動物の鳴声を紹介しているようです。そしてイラストは、『ウサギについての歌(Песенка о кроликах)』など、動物の絵で有名なアンドレイ・ブレイ。彼が描く素朴で色鮮やかな動物の絵は、当時のロシア絵本の素晴らしさを、余すことなく伝えています。
【 この本を選んだ理由 】
いのまたさんから、「古いロシアの本で、紙の粗末なもの」と言われて、だいたい「このようなモノが欲しいのかな」というイメージはすぐに浮かびました。ただ問題は、入手がとても困難なこと。このロシア絵本もそのうちのひとつ。ロシア絵本は、大きさもA5サイズに満たないもので、紙も粗末なもの。安価で、大量に印刷することを目的としたためで、あまり大事に扱われず処分され、ロシアでも入手困難と言われています。しかしなんとか入手して、こうして紹介することができました。時間がかかってすみません。
【 依頼者の感想 】
今年の夏休みにロシアに行って来ました。私は本や紙ものが好きなので、本屋、古本屋、文房具や、本の市などを中心に廻ってきました。で、あれこれ買い付けなどもしてきたのですが、古いロシア本が思ってた程は買えず、もっと欲しいなぁ、またロシアに行こうかなぁ、などと思っていた頃、手紙社の北島さんに「いのまたさん、欲しい古本ないですか?」と聞かれたのでした。それで「うーん、今欲しいとしたらロシアの古い本かなぁ」と言ったところ、それが今回の「ご依頼の本、探します」のお題としてエントリーされたのでした。
モダン・クラシックの古賀さんが選んでくれた本は、どれもこれも心踊りました。でも、私が最初に欲しいと思っていたのはロシア語の本。ロシア語の古い本、なのです。最初の3冊が送られてきたとき、どれもとても良さそうだけどロシア語じゃないなぁ…、と悩みました。で、それを北島さんに告げたところ、古賀さんはさらに1冊探してくれたのです。「おー、そうそう、欲しいと思ってたのはこういう感じなんだよねぇ」と嬉しくなったけれど、しかし! 58,000円! 欲しいけど、欲しいけど、買えない…(泣)。ロシアの古い本って、私が思ってた以上に貴重なのですね。勉強になりました。最初は「動物の話/トルストイ」が翻訳本ではなくてロシア語のならいいのになと思いはしたけれど、よくよく考えてみれば読める方が内容もわかっていいんじゃない?と思い直し、なので、今回は「動物の話/トルストイ」を購入しようと思います。絵もとてもいいし、昭和21年当時の翻訳本なのも興味あります。でも本当は、雑誌『USSR IN CONSTRUCTION』も「ロシヤ料理」も「Шум ка дворе ( Noise in the yard )」も、みんな見てみたいです。古賀大郎さん、加代さん、今度みんな持って遊びに来てください〜。
- 『動物の話』






【 この本の調書 】
ロシアの文豪トルストイが、農家の子供たちのために書いた動物のお話。「火事のとき子供を助ける犬」「ロシア兎」「雀とつばめ」など、動物を題材にした短編が、6話収録されています。どのお話も、説話じみた感じは少なく、ロシアの自然のなかで生きる動物の姿を、一枚の絵のように、優しく描き出してるのが特徴です。
そして挿絵は、ロシアでは有名な美術家、ファヴォルスキーによる版画。彼の素朴で、誠実な動物の版画が、何とも言えないロシア絵本の世界観を作り出しています。
ちなみに、訳者の廣尾猛は、ナウカ社の大竹博吉の変名。当時国交がなかったソヴィエトの本を、日本に輸入した唯一の本屋がナウカ社でした。ロシア絵本も、わずかではありますが、このナウカ社を通じて、リアルタイムで日本に持ち込まれました。しかし社主の大竹博吉が、治安維持法により投獄され、1936年にナウカ社は活動停止に追い込まれます。戦後、釈放された大竹は、廣尾猛の変名で、このロシア絵本の翻訳本を出版します。そしてこの本を最後に、ロシア絵本のわが国への紹介は途絶えるのです。